伊賀先生とは、今年4月、研修している病院(静岡赤十字病院)でのセミナーで知り合いました。その中で、到達目標を設定し、系統だった診察・所見取りを行うことの重要性を学びました。その翌日に亀井道場での講義に参加させていただき、学生さんへ教える機会をもつことで、人に何かを上手く伝えるということの難しさを痛感しました。

 

今回は、2日間にわたって診療所研修を行うことができました。

@    診療所での外来研修

A    兵庫医科大学5年生に対する講義

B    野球の練習

という3本柱の研修でした。

 

@    診療所での外来研修

 今回の研修での到達目標は、

・ 現在、自分が聴くことのできる心音と心雑音を系統だって聴取し、循環器専門医である伊賀先生からのフィードバックを得ること。

・急性心筋梗塞や狭心症の患者さんの病歴を聴取し、今まで自分が経験してきた症例との比較を行うこと。

2点でした。

今回の外来研修では、様々な患者さんから病歴を聴取したり、心音・心雑音を聴くことができました。VVIペースメーカーが挿入されている患者さんのT音の大砲音・U音の奇異性分裂、ARの患者さんの拡張期雑音、ASARの患者さんの収縮期雑音、収縮期後期クリック等を聴くことができました。病歴、心電図、心エコー、胸部X線所見等も併せてみることで、聴診にとどまらず総合的に病態を把握することができました。三尖弁閉鎖不全症の方の頚静脈のCV波も印象的でした。また、典型的な労作性狭心症の病歴、急性心筋梗塞(下壁梗塞)の病歴、発作性心房細動のoverdrive suppressionの病歴を聴くことできたことも貴重な経験となりました。また、動悸を主訴に来院した発作性心房細動の患者さんが、ピルジカイニド(サンリズム)を内服して30分ほどで動悸が消失したという病歴を目の前で経験できたのは非常に印象に残りました。

 

A 兵庫医科大学5年生に対する講義

 まず驚いたのは、学生さんのレベルで系統だった全身の診察を淀みなく行うことができていたことです。患者さんの前に出る最低限のエチケットであり、当然のことであるが、前回の講義で到達目標を明確にした結果であり、目標をもつ大切さを痛感しました。急性心筋梗塞におけるトロポニンTの話で、検査の感度・特異度は検査前確率がわからないと全く意味がないという話をしました。このことを通じて、学生さんに病歴聴取と身体所見の重要性を理解してもらおうとしたのですが、やはりわかりやすく教えることは難しいのだと痛感しました。自分の知識や経験をきちんと整理し、いつでもoutputできる状態にしておかないと、人に何かを伝えることはできないのだと改めて感じました。日々の研修の中でも、同期や後輩と教えあう機会を設け、「Teaching is learning」の文化を広げていきたいと思います。

 

B 野球の練習

 2日目の研修の前、先生の所属している草野球チームの早朝練習に参加させていただきました。高校3年間、大学6年間にわたり野球部に所属していましたが、研修がはじまってからの運動不足と体力不足を露呈する結果となりました。

 

今回の2日間の研修から得た今後の目標は以下の通りです。

 

(1)系統だった診察(心音・心雑音に限らず)を常に心掛け、指導医からのフィードバックを積極的に求め、診察レベルの向上に努めること。

(2)日々の診療の中で、意識的に「教える機会」を増やすこと。

(3)定期的に運動をし、体力向上に努めること。

 

まだ専門も決まらず方向性も定まっていない状況ですが、specialized fieldをもったgeneralistを目指して日々精進していきたいと思います。2日間本当にありがとうございました。

 

私から;先生の兵庫医大での学生に対する講義、とても参考になりました。私なら、いらいらして答えをいってしまうのを誰かが答えるまでじーと待っている。しかも、そうする理由が明確でした。常に到達目標をもち、5年先の自分イメージをもたれている先生が、もっとすばらしい医師になっていくことをみることはとっても楽しみです。       2009-9-22